「ヤマブシタケの栽培指針」より抜粋(2005年3月 富山県森林研究所高畠幸司研究員)

ヤマブシタケの乾燥品は漢方薬(生薬名:猴頭)として取り扱われ、消化不良、神経衰弱、身体虚弱、胃潰瘍に効き、抗癌物質を含むとされている。最近では、子実体には、HeLa細胞増殖阻害物質、神経成長因子合成誘導促進物質、花粉管発芽成長阻害物質、免疫機能調節成分、抗腫瘍多糖類、レクチンなどの薬用成分の存在が報告されている。
ヤマブシタケには神経細胞の再生に関与する神経成長因子合成誘導促進物質であるヘリセノン類、エリナシン類が含まれていることから、認知症の改善に作用することが期待されている。そこで、認知症改善作用のスクリーニング(選抜試験)に使われているプロリン特異性エンドプロテアーゼ(PEP)阻害活性を測定した。PEPは、神経伝達物質や神経ホルモンを分解する酵素である。この酵素の作用を妨げれば、健忘症やアルツイマー症を防ぐことができる。富山県産(Her14)、北海道産、長野産のヤマブシタケ、中国産、アガリクス(ヒメマツタケ:中国産)のPEP阻害活性を測定したところ、ヤマブシタケ、アガリクス共にPEP阻害活性があり、富山県産が最も高い活性を示した(図−1)。このことは、ヤマブシタケに認知症を改善する可能性があることを示唆しており、特に富山県産ヤマブシタケが強く期待できる。
図−1産地の異なるヤマフシタケ、アガリクスのPEP阻害活性